つれづれいきもの

昆虫、猫、鳥、他にもいろいろ・・・?身近な生き物観察記!

自宅、5メートル圏内の生き物たち(その1.街中の大型動物)

 

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 私達が今のマンションに引っ越してきたのはもう20年ほども前なのですが、交通量の多い国道沿いという事もあり、当時から特に田舎という環境ではありませんでした。

 近隣にまとまった林や草地などもなく、いわゆる普通の住宅街。

 にもかかわらず引っ越して間もない頃、ベランダの外の植え込みに、思いがけぬ大きな動物がやって来た事が、2回ほどありました。

 1回目は確か冬のある日、ベランダで洗濯物を干していた時の事。

 植え込みの中で何かが動く気配に振り返ると、四足の動物と目が合いました。

 一瞬、驚きましたがまあ、普通に猫だろうなと思いました。大きさもそんな感じでしたので。

 でも、顔が猫ではありません。

 何だか鼻がとがっていて、犬のようにも見えます。

 やせ細って白っぽくすかすかの毛並みでしたが、よく見るとその動物はタヌキでした。

 本来、体を覆っているはずの厚い毛がほとんどないその姿は、おそらく犬や猫にも見られる皮膚病、カイセンに違いありません。

 かゆいのか、痛いのかはわかりませんが、少なくとも寒いのではないでしょうか。

 とても気の毒な姿です。

 それ以来、そのタヌキは何度か植え込みに現れましたが、いつも変わらずスカスカの毛並みのままでした。

 何とか治療してあげられないかと考え、ある時獣医さんに相談してみました。

 「餌付けされていれば、エサに薬を混ぜて食べさせる手はあると思います。」とアドバイスを頂いたのですが…。
 それまでも姿を見ては、食べ物に困っていないか気になっていたのですが、私が勝手に餌付けしてマンションの敷地内にタヌキを居つかせるワケにもいかず、食べ物を出した事はありませんでした

 でも手当はしてあげたいし、どうしよう…と何日か迷っている間に、そのタヌキは姿を見せなくなってしまいました。

 のちに子ども達を通わせた保育園で聞いた所によると、確かに当時その近辺にタヌキは生息していたらしいです。

 保育園のすぐ隣に小さな竹林があって、そこにはタヌキの親子が住み着いていたのだそうです。

 その場所からうちのマンションまでは車通りの多い道路もあるので、植え込みに現れたのがそのタヌキだったかどうかはわかりません。

 竹林のタヌキはその後、車にはねられて死んでしまったらしいとの事でしたが、少なくともその頃は、街中でもわずかなスペースを根城に生息していたんですね。

 引っ越しする前は横浜市に住んでいましたが、ある時、JR横浜線のホームで電車を待っていたら、線路の上を悠々と歩くタヌキと目が合ってビックリした事もありました。

 タヌキも街中に対応して、たくましく生きるようになってきた、という事なのでしょう。でも、その分交通事故に遭う危険性も大きくなって、今はまた、いなくなってしまったのかもしれません。

 

 そして、タヌキではない大型の珍しい動物がやって来た事も、一度だけありました。

 ある夏の早朝の事、騒々しい物音に目を覚まして窓の外を見ると、何羽かのカラスが鳴き交わしながら、植え込みの向こうにある桜の木の枝を渡り歩いていました。

 夏だから明るくなってはいましたが、まだ明け方の5時にもなっていなかったと思います。

 「なんなの、こんな時間に…」と迷惑に思いながら、何とも嫌な感じがしました。

 誰かがその辺りにゴミを捨てたか、あるいは動物の死骸でもあるのか…。

 とても気が重かったのですが、うるさくて眠れなくなってしまったので、おそるおそる窓を開けて、外の様子をうかがってみました。

 太い枝の上を3羽のカラスがウロウロと渡りながら、「カア、カア」と、大きな声で騒いでいます。私の姿を見ても逃げようともしません。

 明らかに何かターゲットがあるらしい様子に、更に嫌な予感がしました。

 「何だろう、何があるのかな?」と不安に思いつつ、視線を桜の幹の上から下へ、ゆっくりと下ろしました。

 すると、太い枝の分かれ目の所で何かと目が合いました。

 何?これは。

 犬?猫?タヌキ?

 まさか、チェシャ猫?妖怪?

 そのいずれでもない、けっこう大きな動物。

 黒っぽい顔にけっこうとがった鼻、そして鼻に白いラインが一本…。

 それが目印でした。

 「これが、うわさに聞くハクビシンか…!」

 直接見るのは初めてでした。

 体の色はこげ茶っぽくて、タヌキの色に似ているような気がします。

 目は大きくてけっこうかわいく見えますが、耳の形や顔の模様など、見慣れぬものを見る奇妙さがあります。

 家の窓から動物園にいる動物を眺めているような気分です。

 しばし、私たちは見つめ合いました。

 向こうは大きな目を丸くしていましたが、私もそのハクビシンと同じ様に目を丸くしていた事だろうと思います。

 私の方は静まりかえった早朝にただ一人で盛り上がり、珍しがっていただけですが、先方は「やばい!」と感じたようです。

 私から目を離す事なく、ゆっくり、ゆっくりと前足を伸ばすと、私の動きに警戒しながら、慎重に桜の木を下りて行きました。

 「ああ…、ごめん、ごめんなさい。見てるだけだから…。降りなくてもいいよ…。」と言いたい気分でした。

 じっと動かずに見守っていたのですが、そのままハクビシンは茂みの中に消えていき、ターゲットを失ったカラスもやがてどこかへ飛んで行きました。

 私がハクビシンを見たのはその1回きりでしたが、やはり保育園で聞いたところによると、この辺りで時々目撃されているようでした。

 ただ、私が見たハクビシンのゆっくりとした動きはやはり普通ではなかったのだと思います。

 恐らくケガか病気をして木の上で弱った体を休めていたところ、雑食カラス連中に見つかってしまい、襲われる寸前だったと考えられます。

 私が見つけなければ襲われていたのか、もしくはそのままそこで傷をいやすことができたのか…。

 そしてそれ以来現在まで、私はハクビシンを見た事はありません。

 その1回きりでした。

 子ども達や近所の人の目撃譚も聞いた事がありません。

 やはりタヌキと同じ様に、街中で生息し続ける事はできなかったのでしょうか。

 また、ちょっと風変わりな彼らと、目が合ってびっくり…という経験をしてみたいものです。