カマキリぞろぞろ・・・
このタイトルだけで「ああ、あれね…」と思い当たる方もいらっしゃるでしょうか。
そう、あれです。
秋口になると枯れたススキの穂なんかに見られる、カサカサしたスポンジ状のカマキリの卵。
なんとも子ども心をくすぐるおもしろさがありますよね。
見つける事も採集することも簡単。しかも表面は乾燥していて不衛生でもないので、家に持ち帰った事がある人は、結構多いのではないでしょうか。
そして、この後の私と同じ経験をされた方もいらっしゃるかもしれません。
図鑑オタクの私だったので、当然そこからどんな風にカマキリの子ども達が出てくるのかは知っていますが、実際に見た事はありません
「一度でいいからカマキリの赤ちゃんが出てくる所を見たい!」
そう思った私は、確か小学校低学年の頃だったでしょうか。卵を一つ、虫かごに入れて持ち帰りました。
しかし、ひとつの問題だったのは、カマキリがいつ頃かえるのかよくわからないという事した。
カマキリの卵は越冬する為に保温性の高いスポンジ状の塊の中にたくさん産みつけられるのですから、春にならないと出てこない事だけはわかっています。
4月くらいでしょうか。でも何日くらいから見ていればいいのか…。
あるいは気温を気にしていればいいのか…。
ろくに何もわからぬままに虫かごごと、カマキリの卵は室内に放置されました。
何故室内だったかと言うと、「越冬するにしても、真冬に外に出すのはかわいそう…」とか、余計な仏心を出しからです。
これが後の事件につながる事はたやすく予想できたのに。
「暖かくなったら毎日観察して、かえったカマキリはすぐに外に出してやればいい」などと、簡単に考えていたのでしょう。
しかし、虫かごをひと冬放っておく間に、子どもであった私の関心が薄れる事も、これまたたやすく予想できる事でした…。
春が来る頃にはそれを、枯れた植物か古いスポンジみたいに思っていたような気がします。
そして、すっかり暖かくなってきたある朝の事でした。
いつも穏やかな母が部屋に飛び込んできて、「ちょっと、大変よ!早く来なさい!」と慌てて私を起こしました。
「こんな風に起こされるなんて何事か…?」と、寝ぼけ半分で居間に行ってみると、あらら、ホントに大変な事に…!
薄黄色の小さなカマキリがチラチラ、チョロチョロ、ウジャウジャと床を歩き回っているじゃありませんか!
子ども心に「あー、そうだった、しまったあ…!」とは思いましたが、とにかくどうにかしなければなりません。
慌てて捕まえようとしましたが、小さいし、数は多いし、動きは早いし、とてもとても手に負えません。
窓を開けて外に追い出そうとしましたが都合良く向かってくれるはずもなく、そうしている間にも彼らは広範囲に散らばる一方。何しろ多勢に無勢です。
気持ちとしては1匹1匹をちゃんと外に出してあげたかったのはやまやまですが、どうにも手の打ちようがありませんでした。
やむを得ず、母と2人でほうきを持って来てできるだけ窓の方向に彼らを飛ばすように掃き出しました。
どれ位の時間をかけて、どれ位の数の彼らを外に出したのか、その辺りはさっぱりわかりません。
始めは、「傷ついてたくさん死んでしまうのではないか…」と思ったこの方法でしたが、見るからに華奢な彼らは案外にも丈夫だったようで、部屋の中には一匹の死骸も残らなかったのでとてもホッとした事を覚えています。
しかし!孵化する所は残念ながら、見られませんでした。
そして私は母に叱られ、それに懲りてもう2度とカマキリの卵を家に持ち込む事はしませんでした。
ちなみに、先ほど動画サイトを検索したところ、カマキリが孵化する場面を撮影した動画がいくつか投稿されていました。
押し出されるトコロテンの様ににゅるにゅると出て来るその様子は、あんまり気持ちの良い見せものでもありませんでした…。
子どもの頃、実際にそこを見なくて正解だったかもしれません!